高い金を出して入れたのに、現場が使わない。気づけばエクセルに戻っている。
このとき、「現場の意識が低い」という説明が出てくることがあります。でも、それでは何も解決しません。
定着しないシステムには、共通する構造があります。だいたい次の4つのどれかです。
理由① 新しいやり方のほうが、現場にとって面倒
一番多い原因です。
経営層から見れば、データが揃って集計が楽になる。でも現場から見れば、入力項目が3つから7つに増えただけです。
楽になるのは上で、面倒になるのは下。この構造を放置すると、現場は必ず元のやり方に戻ります。気合いではなく、合理的な行動です。
直し方
入力を増やすなら、同じ人の別の作業を減らす。これをセットで設計します。
店舗に在庫入力をお願いするなら、引き換えに本部への日報をなくす。工場に実績登録をお願いするなら、手書きの作業日誌を廃止する。
「増えるだけ」にしない。これを守るだけで、定着率は大きく変わります。
理由② 例外のときどうするかが決まっていない
システムは、決められた手順を処理するのが得意です。現場が困るのは、手順から外れたときです。
- 伝票が届く前に現物が到着した
- 卸先から緊急の注文が電話で入った
- 商品が変だったが、不良として良いのか判断がつかない
ここで手が止まると、現場は「とりあえずメモに書いて、あとで直す」を始めます。そしてその「あとで」は来ません。
直し方
導入前に、現場にこの一問をしてください。
「この1ヶ月で、いつもと違うことが起きたのはどんなときでしたか」
これを各拠点で聞くと、10分で5つくらい出てきます。その5つの処理方法を先に決めておくだけで、稼働直後の混乱の大半が消えます。
理由③ 使える人が1人しかいない
導入を担当した人だけが詳しい。その人が休むと、誰も進められない。
この状態では、現場は分からないことがあったときに聞くのをあきらめて、手作業に戻ります。聞くのに1日かかるなら、エクセルでやったほうが早いからです。
直し方
あるアパレル小売様で販売管理システムを入れたとき、自分ひとりでは回らないと判断して、部署のスタッフ全員の理解度を上げることに時間を使いました。部署として全店舗をバックアップする体制をつくる。
結果、全体に定着するまでおよそ5年かかりました。長いと思われるかもしれませんが、この年数を見積もらずに始めるから、半年で「失敗」と断じてしまうのだと思っています。
理由④ 入れて終わりにしている
ベンダーの仕事は納品までです。これはベンダーが悪いのではなく、契約の範囲がそうなっているというだけです。
つまり、稼働後に帳票を直す人が、発注側にいないと定着しません。
帳票は一回では決まりません。紙製品メーカー様の支援では、営業部門が実際に見る画面になるまで初版から13回の改訂を重ねました。作って納品して終わりなら、その帳票は使われていません。
直し方
稼働後6ヶ月の予算と担当を、導入の見積と同じタイミングで決めておく。ここを後回しにすると、稼働後に「人がいない」という理由で改善が止まります。
番外:入れ替えのときは、画面を似せる
既存システムを入れ替える場面では、もうひとつ見落とされやすい点があります。
できることが同じでも、操作画面が変わるだけで作業効率は落ちます。スタッフが積み上げてきた熟達度は、目に見えない資産です。
先のアパレル小売様で後継システムを選んだときは、金額と機能ではなくUIが以前と近いことを判断基準のひとつにしました。事前に操作説明を行い、混乱なく切り替えています。
定着しているかを、何で見るか
「使われていますか」と聞いても、現場は「はい」と答えます。数字で見てください。
- ログイン人数(想定人数の何割か)
- 手作業のファイルが残っていないか(共有フォルダを見れば分かります)
- 入力の遅れ(実体の動きと、データに入るタイミングの差)
- 問い合わせの件数の推移(減らないなら、手順が伝わっていません)
3ヶ月の時点で見るのは、効果ではなく使われているか。この時期に効果を問い詰めると、まだ定着していないシステムを失敗と断じてしまいます。
まとめ
定着しないのは、現場の意識の問題ではありません。増えた手間に見合う見返りがない、例外の道がない、聞ける人がいない、直す人がいない。この4つのどれかです。
どれも、導入前に手を打てます。そしてどれも、ツールを変えても解決しません。
株式会社nullkyotoは、京都を拠点にシステムの選定から現場定着までを支援しています。すでに入れたシステムが使われていない、というご相談も承っています。初回相談は無料です。
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