3社に見積を依頼したら、800万・1,400万・2,300万で戻ってきた。
このとき、安いところがお得なのではありません。この段階では、まだ比べられていないというのが正しい読み方です。
金額が3倍ばらつくのは、だいたい発注側が渡している情報に原因があります。
なぜ金額がバラつくのか
同じ質問をしても、各社が想像しているものが違うからです。
- A社は、現行業務をそのまま移す前提で見積もった
- B社は、パッケージの標準機能に合わせる前提で出した
- C社は、将来の拡張を見込んで基盤から提案した
どれも嘘をついていません。前提が違うだけです。この前提を揃えない限り、何社から取っても比較になりません。
同じ土俵に乗せるために、渡すもの
立派なRFP(提案依頼書)は要りません。A4で数枚、この5つが揃っていれば十分です。
- いま困っていることを、数字で 例:月末集計に3日、在庫差異が月平均120件
- 業務の規模 拠点数、利用人数、SKU数、月の伝票件数
- つなぐ相手 会計ソフト、ECモール、倉庫のWMS、POS
- やらないこと 今回は手をつけない領域を明記する
- 判断のスケジュールと予算のレンジ
4の「やらないこと」が抜けがちです。これを書かないと、各社が良かれと思って範囲を広げ、金額が膨らみます。
予算のレンジを伝えることに抵抗がある方がいますが、伝えたほうが良い提案が来ます。予算が分からないと、ベンダーは安全側に寄せて見積もるしかないからです。
価格以外に見る5つの軸
1. 質問の量と質
見積の前に何も聞いてこない会社は、あとで必ず「それは含まれていません」が出てきます。
逆に、現場の例外処理を聞いてくる会社は、導入後を想像できています。これは強いシグナルです。
2. 「できません」と言うか
全部の要望に「できます」と答える会社は、カスタマイズで何でも作るつもりです。作れますが、高くなり、将来のアップデートも難しくなります。
「それは標準機能ではできません。運用をこう変えるか、別途開発になります」と言える会社のほうが、実際には信用できます。
3. 誰が手を動かすのか
提案した会社と、実際に開発する会社が違うことは、よくあります。悪いことではありませんが、知らないまま発注すると、改善依頼の往復が増えて遅くなります。
あるアパレル小売様の支援では、改善依頼がコンサル会社経由で開発元に流れている構造が分かり、以降は開発元に直接働きかける形に切り替えました。障害時の対応も速くなります。
発注前に「開発体制図をください」と伝えるだけで確認できます。
4. 稼働後の体制
障害の受付時間、応答までの目安、軽微な改修が保守に含まれるか。
ここの回答が曖昧な会社は、保守体制が固まっていません。導入費より、こちらのほうが長く効いてきます。見積書で必ず見る5項目でも同じことを書いています。
5. 相性(これも判断材料です)
数年つきあう相手です。話が通じない、返信が遅い、こちらの業界を知らない。この違和感は、契約後に消えません。
やってはいけない相見積もり
- 他社の見積金額を見せて値引きを迫る…削った分は必ずどこかで戻ってきます。作業量が同じなら、削れるのは品質か保守だけです
- 本命が決まっているのに、当て馬で取る…提案には人日がかかっています。業界は狭いので、評判に跳ね返ります
- 5社以上に声をかける…比較しきれなくなり、判断が遅れます。3社が上限です
比べるときの表の作り方
横に3社、縦にこの項目を並べます。
- 初期費用(内訳を並べる。「一式」は分解してもらう)
- 月額費用(ライセンスと保守を分ける)
- 5年合計(ここで順位がひっくり返ることがあります)
- 自社の作業量(前提条件の「貴社作業」を拾う)
- 導入期間
- 上の5つの軸の評価
特に5年合計を入れてください。初期費用が安くて月額が高い提案は、数年で逆転します。契約は、2年目以降のほうが長いです。
まとめ
相見積もりは、安い会社を探す作業ではなく、前提を揃えて差を見る作業です。
揃えるのに使うのはA4数枚。これを作るのに半日かけておけば、あとの判断がすべて楽になります。
株式会社nullkyotoは、発注する側の立場で、見積書・提案書のレビューとベンダー選定の支援を行っています。1回のレビューからで構いません。
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