「とりあえず全社でAIを使えるようにしました」
この状態から半年後にどうなっているか。使っているのは、もともとITに強い数人だけ。このパターンを何度も見てきました。
原因はツールではありません。業務の選び方です。AIで成果が出る業務と、出ない業務は、はっきり分かれています。
成果が出る業務の4条件
次の4つをすべて満たす業務は、ほぼ確実に効きます。
1. 頻度が高い
月に1回の作業をAI化しても、覚える前に次の月が来ます。毎日か、少なくとも週に数回。この頻度がないと定着しません。
2. 正解を人間が即座に判定できる
出てきた結果が合っているかどうかを、見た瞬間に判断できるか。
文章の要約やメールの下書きは、読めば分かります。一方で、法規の解釈や税務の判断は、合っているかを確かめるのに結局調べ直すことになります。それでは時間が減りません。
3. 間違えたときの損失が小さい
下書きが変だったら、書き直せばいい。でも、請求金額が違っていたら取り返しがつきません。
失敗が可逆かどうか。ここで領域を分けてください。
4. いま人間がやっていて、手間だと思われている
意外に見落とされますが、これが一番大事です。
現場が「面倒だな」と思っている作業なら、楽になる道具は自分から使います。逆に、現場が誰も困っていない作業をAI化しても、使われません。
具体的に、どこから手をつけるか
4条件を満たしやすいのは、このあたりです。
- SNSやブログの下書き…頻度が高く、良し悪しを読めば判断でき、失敗しても直せる
- 長い資料の要約と見出し化…元資料が手元にあるので検証が楽
- 議事録の下ごしらえ…ただし後述の注意点あり
- 問い合わせへの返信案…定型部分を埋めて、人が仕上げる
- Excelの関数やマクロの作成…動くかどうかで即座に判定できる
- 商品説明文の大量生成…ECでSKUが多い場合に特に効く
ある小売企業様の情シス支援では、SNS運用の工程にAIを組み込み、週に12時間かかっていた更新作業を2時間にしました。年間に直すと、消えた作業はおよそ520時間です。
この件がうまくいったのは、AIが優秀だったからではありません。担当者が毎週面倒だと思っていた作業だったからです。
成果が出ない業務
例外だらけの業務
受注処理や返品対応のように、「この場合はこう」が30通りある業務。
例外をすべて指示に書き出す手間が、自分でやる時間を上回ります。ただし、例外を書き出す作業自体には価値があります。それは業務改善の一歩目であって、AI化の一歩目ではないというだけです。
自社のデータが必要な業務
「自社の過去の見積を学習させて、自動で見積を作りたい」
この相談は多いですが、その前に確認すべきことがあります。過去の見積は、検索できる形で残っていますか。
PDFがフォルダに散らばっている状態だと、AIに食べさせる前の整理でプロジェクトが終わります。データがないのはAIの問題ではなく、業務設計の問題です。
責任が伴う判断
与信判断、採用の合否、品質の最終確認。ここはAIに渡さない。
技術的にできるかどうかの話ではなく、間違ったときに誰が説明するのかという話です。
議事録AIの、よくある落とし穴
上のリストに入れながら「注意点あり」と書いたのには理由があります。
議事録AIは、議事録を作る時間を確かに減らします。ただし、もともと議事録を作っていなかった会社に入れると、作業が増えます。AIが出したものを誤りがないか確認する作業が新規で発生するからです。
工数削減の値を出すときは、導入前に、誰が何分使っていたかを測っておく。測っていなければ、減ったのか増えたのかも分かりません。
最小構成で始める
全社導入から入らないこと。順番はこうです。
- 4条件を満たす業務を、1つだけ選ぶ
- いまの時間を測る(誰が、週に何時間)
- 1人・1ヶ月で試す
- 手順を文章にする(ここが欠けると属人化する)
- 測り直して、効いていたら広げる
4の「手順を文章にする」が、実は一番重要です。AIの使い方が上手い人の頭の中にしかない状態は、その人が抜けたら終わります。
まとめ
AIで成果が出るかどうかは、ツールの性能ではなく、どの業務に当てるかで決まります。
頻度が高く、正解を即座に判定でき、失敗が可逆で、現場が面倒だと思っている。この4つを満たす業務を探して、まず1つだけやる。
逆に、この条件に合わない業務に手を出すと、「やってみたけどダメだった」という経験だけが社内に残ります。それが一番高くつきます。
株式会社nullkyotoは、京都を拠点にAIの導入と現場定着を支援しています。「どの業務に当てるべきか」の切り分けだけのご依頼も承っています。初回相談は無料です。
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