8年、情シス代行を続けている側から、費用の構造を書きます。金額は書きません。理由も書きます。
「月10万円から」「月30万円が相場」。調べると数字が並びますが、実際に見積を取ると全然違う金額が返ってくる。これは、どこかが嘘をついているわけではありません。前提が違うものを、同じ土俵で比べているからです。
なぜ「相場はいくら」と書けないのか
相場が示せない理由は2つあります。
ひとつは、裏取りできる統計が存在しないこと。情シス代行という業態に業界統計はありません。各社が自社のプラン価格を「相場」として書いているのが実態で、それは相場ではなく単なる自社価格です。
もうひとつは、任せる範囲で金額が倍以上動くこと。「社員のPCが起動しないときに対応する」のと「システム投資の予算配分を決める」のでは、必要な人の単価がそもそも違います。同じ「情シス代行」という言葉で括られているだけです。
ここを曖昧にしたまま金額だけ出すのは、あとで揉める原因を作っているのと同じです。だから弊社は書きません。かわりに、比べ方をお伝えします。
料金体系は3つの型に分かれます
会社によって名前は違いますが、中身はだいたいこの3つです。
月額固定型
決めた範囲を毎月いくら、という形です。予算が読めるのが利点で、使わなかった月も同額なのが欠点です。
ただし「使わなかった月」をどう捉えるかは考えどころです。何も起きなかった月は、何も起きないように保っていた月でもあります。火災保険と同じで、使わなかった年が損だとは限りません。
従量課金型
対応した件数や時間で精算する形です。閑散期は安く済みますが、繁忙期は読めません。
そして、これがいちばん見落とされる点ですが、従量課金だと現場が呼ばなくなります。「呼ぶと課金される」と分かっていると、担当者は自分で調べようとします。その結果、手に負えなくなってから相談が来る。手遅れの状態から始める対応は、最初から相談されていた場合より確実に高くつきます。
弊社が月額固定型を採っているのは、この一点が理由です。
スポット型
困ったときだけ依頼する形です。単価は明快ですが、毎回「うちの事情」を説明する時間が乗ります。ネットワーク構成、過去の経緯、なぜこの設定になっているか。これを毎回ゼロから説明するコストは、請求書には載りませんが、確実に発生しています。
費用を動かす4つの軸
見積を並べるときは、金額の前にこの4つが揃っているかを見てください。ここが違う見積を金額だけで比べても、安いほうが安いとは限りません。
1. 範囲|どこまで任せるか
いちばん金額を動かす軸です。ヘルプデスクだけなのか、ベンダー折衝まで入るのか、IT投資の判断まで含むのか。
見積書に「情シス業務全般」としか書かれていない場合は、必ず内訳を出してもらってください。「全般」は、あとから「それは範囲外です」と言われる余地を残した書き方です。
2. 対応時間|いつ動くか
平日日中のみか、営業時間に合わせるか。小売や飲食なら土日が動きます。ここを平日前提で見積もった会社と、土日込みで見積もった会社を比べれば、当然前者が安く見えます。
3. 常駐の有無
常駐・準常駐・リモートで単価が変わります。常駐はいちばん高くなりますが、本当に常駐が必要な業種は限られます。「安心だから」で常駐を選ぶと、費用対効果は確実に悪くなります。
4. 緊急対応の扱い
月額に含むのか、都度精算か。深夜・休日の割増があるのか。ここを詰めずに契約すると、トラブルが起きた月の請求書で驚くことになります。
そして、この4つを揃えて聞いたときにすぐ答えられない相手は、社内でも整理できていません。それ自体が判断材料になります。
採用した場合の総額と比べる
「外注は高い、採用したほうが安い」という比較をよく聞きます。ただ、比べる対象が給与だけになっていることが多い。
給与以外にかかるもの
- 採用そのもののコスト(求人広告か、人材紹介か。紹介なら想定年収に対する手数料)
- 会社負担の社会保険料
- 立ち上がるまでの期間。入社してすぐ全部わかる人はいません
- 教育と、その間に発生する既存社員の工数
- PC・ライセンス・席
いちばん大きいのは、辞めたときのコスト
これが本題です。
情シスを1人で回している会社で、その1人が辞めるとどうなるか。パスワードが分からない。ベンダーとの経緯が分からない。「なぜこの設定になっているか」が誰にも分からない。引き継ぎ書があっても、書かれていないことのほうが多い。
そして、また採用からやり直しです。採用コストと立ち上がり期間が、もう一度まるごとかかります。
外に出す場合も、外注先の担当者が代われば同じことが起きます。これは外注のデメリットとして、正直に書いておきます。だから見積を比べるときは、その会社の担当者が何年続いているかを聞いてください。
情シスBPOとの違い
「情シスBPO」という言葉も見かけます。BPOはビジネスプロセスの外部委託という意味で、決まった業務を、決まった手順で、まとめて引き受ける形を指すことが多い。問い合わせ対応やキッティングのように、量があって手順が固まっている業務に向きます。
逆に、「どのシステムを入れるか」「この見積は妥当か」といった判断を伴う仕事は、手順化できないのでBPOには馴染みません。会社の状況によって、どちらが必要かは変わります。
3社から見積を取るときのチェックリスト
- 範囲の内訳が、業務名レベルで書かれているか
- 対応時間と、時間外の扱いが明記されているか
- 緊急対応が月額に含まれるか、都度精算か
- 担当者が固定されるか。何年続いている会社か
- 契約終了時に、権限とアカウントがどう戻るか
- 最低契約期間と、途中解約の条件
金額の比較は、この6つを揃えてからです。順番を逆にすると、たいてい安いところを選んで、あとで足りない分を追加発注することになります。
弊社の場合
90店舗超を展開する小売企業様の情報システムを、2018年3月から担当しています。2026年8月時点で8年5ヶ月、担当は一度も代わっていません。インフラ・システム対応は累計104件。直近は部長ポジションとして、ベンダー折衝から予算配分まで受け持っています。
始まりは月1回の定例でした。いきなり広く任せるより、困りごとの棚卸しから入るほうが、結果として安くつきます。
金額は、状況をうかがってからお出しします。他社さんの見積を見ながら「この項目は何ですか」を一緒に読むだけ、という形でも構いません。
よくあるご質問
情シスの外注費用はいくらですか?
一律の金額は出せません。範囲・対応時間・常駐の有無・緊急対応の扱いで倍以上変わるためです。「情シス業務全般」としか書かれていない見積は、必ず内訳を出してもらってください。
情シス代行の相場はいくらですか?
情シス代行という業態に業界統計はありません。各社が自社のプラン価格を「相場」として書いているのが実態です。金額を比べる前に、範囲・対応時間・常駐の有無・緊急対応の4つが揃っているかを確認してください。
料金体系にはどんな種類がありますか?
月額固定型・従量課金型・スポット型の3つです。従量課金型は「呼ぶと課金される」と分かると現場が呼ばなくなり、手遅れになってから相談が来るため、結果として高くつくことがあります。
採用した場合の費用とどう比べればいいですか?
給与だけで比べないことです。採用コスト、会社負担の社会保険料、立ち上がるまでの期間、教育に伴う既存社員の工数、PC・ライセンス・席。そしていちばん大きいのが、辞めたときにもう一度まるごとかかるコストです。
情シスBPOとは何ですか?
ビジネスプロセスの外部委託という意味で、決まった業務を決まった手順でまとめて引き受ける形を指すことが多いです。問い合わせ対応やキッティングのように量があって手順が固まっている業務に向きます。判断を伴う仕事は手順化できないため馴染みません。
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