エクセルの在庫管理は、悪いものではありません。
数十SKU、1拠点、担当者1人。この規模なら、エクセルのほうが速いし安い。無理にシステムを入れるほうが失敗します。
問題は「いつ限界がくるか」を、たいていの会社が見誤ることです。気づいたときには、月末の集計に3日かかる状態になっている。
この記事では、現場で実際に起きる7つのサインを挙げます。3つ以上当てはまったら、移行の検討時期です。
サイン① 同じファイルの「最新版」が分からなくなった
在庫管理_最新.xlsx 在庫管理_最新_修正.xlsx 在庫管理_最新_修正_田中.xlsx
こうなった時点で、すでにデータの信頼性は失われています。
エクセルは同時編集に向きません。誰かが開いている間、他の人は読み取り専用でしか開けない。だからコピーが増える。
「どれが正なのか」を人間が判断している状態は、それ自体が業務負荷であり、ミスの原因です。
サイン② 棚卸しのたびに差異が出て、原因が追えない
差異が出ること自体は、どんな会社でも起きます。問題は「なぜ差異が出たか」を追えないことです。
エクセルには履歴がありません。誰が、いつ、どの数字を、いくつに変えたか——記録が残らない。
差異の原因は、だいたい以下のどれかです。
- 入荷検品の粒度が粗い
- 出荷時の記録漏れ
- 返品・不良品の処理ルールが曖昧
- 店舗間移動の記録タイミングのズレ
原因が特定できないと、対策も打てません。毎月同じ差異を出し続けることになります。
サイン③ 集計に半日以上かかっている
月末の在庫集計に、担当者が半日〜1日を使っている。
年間で計算すると6〜12営業日。人件費に換算すれば、システム費用を上回ることも珍しくありません。
さらに深刻なのは、集計が終わった頃にはその数字がもう古くなっていることです。判断の材料が「1週間前の在庫」では、打てる手が限られます。
サイン④ 実店舗とECで在庫を取り合っている
ECで売れた商品が、実は店舗で売れていた。在庫があると思って受注したのに、出せない。
売り越しは、顧客の信頼を直接削ります。そして謝罪と返金の対応で、また時間が奪われます。
エクセルで実店舗とECの在庫を同期させるのは、事実上不可能です。リアルタイム性が求められる領域だからです。
サイン⑤ 「この作業はあの人しかできない」がある
在庫表のマクロを組んだ人が辞めたら、誰も直せない。関数が複雑すぎて、中身を理解している人がいない。
属人化の怖いところは、問題が起きるまで見えないことです。そして起きたときには、もう手遅れになっています。
サイン⑥ 店舗数・SKU数が増えたのに、やり方が変わっていない
店舗が5店から20店になった。SKUが500から3,000になった。なのに在庫管理のやり方は3年前と同じ。
これは典型的な「限界を過ぎているのに気づいていない」状態です。
エクセルの限界は行数ではなく、人間が全体を把握できるかで決まります。一覧を見て違和感に気づけなくなったら、限界です。
サイン⑦ 仕入れの判断が「勘」になっている
どの商品を、いつ、いくつ仕入れるか。
在庫の動きがデータで見えていれば、過去の同時期の販売データから予測が立てられます。見えていなければ、勘に頼るしかない。
そして勘が外れると、滞留在庫か、機会損失のどちらかが発生します。
在庫はキャッシュそのものです。どの時期にどれくらいのキャッシュが必要になるかの予測が立たないことは、資金繰りの問題に直結します。
ではシステムを入れれば解決するのか
いいえ。ここが一番大事なところです。
在庫差異の原因の多くは、システムではなく現場のオペレーションにあります。運用が原因なら、システムを入れても直りません。むしろ「システムを入れたのに差異が減らない」という新しい問題が増えるだけです。
順番はこうです。
- なぜ差異が出るのかを、現場で特定する
- 運用ルールを直す
- その運用を支えるシステムを選ぶ
- 現場に定着させる
「まずシステム選定から」と言ってくるベンダーには、注意してください。
判断の目安
- 3つ以上当てはまる→ 検討を始める時期
- 5つ以上当てはまる→ すでに機会損失が出ている可能性が高い
- 7つすべて→ 早急に着手すべき
ただし、慌ててシステムを入れる必要はありません。まず現状を整理して、何が本当の問題かをはっきりさせるところからです。
株式会社nullkyotoは、京都を拠点に販売管理・WMS・在庫管理の導入と現場定着を支援しています。現場診断(差異原因の特定まで)だけのご依頼も承っています。初回相談は無料です。


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