中小企業のAI活用事例|自社でAIに渡した仕事、人に残した仕事

障子の格子越しに差し込む光

AIの導入を支援している会社として、自社では何をAIに渡しているのか。うまくいったことも、作り直したことも含めて書いておきます。

先に結論です。AIに渡しているのは、下ごしらえと道具づくりまで。取り消しにくい操作は、原則として人が押します。そして、渡していない仕事がいくつかあります。

目次

AIとの関係で、仕事を3つに分けています

  • 渡した仕事…AIに任せて、結果を人が見る(仕訳の下ごしらえ、月次の情報集め、業務ツールづくり)
  • 準備だけ渡した仕事…AIが用意し、実行のボタンは人が押す(記事の公開、メールの送信、仕訳の登録)
  • 渡していない仕事…AIには触らせない(写真、確認の取れない数字、お客様に出す資料の提案)

分け方の理由は仕事ごとに違います。それぞれの節に書きました。業務の選び方の一般論は中小企業がAIを入れて成果が出る業務・出ない業務にまとめています。

渡した仕事は、下ごしらえと道具づくり

形式の違う明細から、仕訳のたたき台をつくる

会計の現場には、形式の揃わないデータが集まります。カードの明細、POSのCSV、取引先ごとに違う請求書。列の並びも、日付の書き方も違います。

会計ソフトのfreeeとAIをつないで、こうした明細から仕訳のたたき台をつくる作業と、勘定科目の振り分けが過去の仕訳と矛盾していないかの確認を渡しています。飲食業のお客様の会計で使っている仕組みで、自社の経理でも同じことを進めています。

ただし登録まではさせません。AIが作った仕訳は、人が見てから通します。どの科目に入れるかの最終判断は人です。詳しくは仕訳作成をAIに渡した事例に書きました。

毎月の情報集め

毎月1日に、社内の議事録やメモ、メールなどを横断して、コラムの種になりそうな出来事を拾う作業をAIに渡しています。サイトの検索データの集計も同じタスクの中です。

拾ったものから何を書くかは、人が決めます。

毎回AIに頼むより、道具を作ってもらう

自社ブランドRawto(鹿肉のドッグフード)は、クリックポスト(日本郵便の小型荷物のサービス)で発送しています。ShopifyとメルカリShopsの注文データを、送り状の形式に直す作業が毎回あります。判断はほとんど要りません。ただ、間違えると荷物が届きません。

この作業は、毎回AIに頼むのをやめて、変換ツールにしました。ツールを作るところをAIに手伝ってもらい、変換そのものは決まった手順で動くツールが行います。ツールはブラウザの中だけで動き、注文データを外に送りません。

同じ作業を毎回AIに任せると、毎回少しずつ違う結果が返ってくる可能性があります。手順が決まっている作業は、道具にしたほうが安定します。AIの出番は、その道具を作るところです。

取り消しにくい操作は、人が押す

定期的に動かしているAIのタスクを数えたことがあります。9件のうち7件が、「AIが準備して、人が最後に押す」形になっていました(2026年8月時点)。

人に残しているのは、一度やると取り消しにくい操作です。記事の公開は、AIが下書きと予約の準備をして、公開は人が確認してから。仕訳は、前の節のとおり人が見てから登録します。

メールは、文面をつくるところまで

2026年9月、こちらが確認する前に、AIがメールを送ってしまったことがあります。

いまは、AIに任せるのは文面をチャットに出すところまでです。メールソフトに下書きも作らせません。送信のボタンは人が押します。

発送ツールは、速さを褒めない

先ほどの変換ツールでも、最後は人が押す作りにしています。変換が終わっても自動ではダウンロードさせず、一覧と警告を見てから人が押します。

ツールには、使った記録が積み上がる仕掛けも入れました。記録するのは、変換した通数、見つけた宛先の不備の件数、ミスなしで続いた回数の3つ。速さは記録していません。

速く終わったことを褒めると、赤い警告を見ないままダウンロードする理由が生まれます。何を褒めるかが、そのまま安全の設計になります。

渡していない仕事は、3つあります

写真

サイトの写真に、AIで生成した画像は使っていません。ストック写真も、生成AIで作られたものかどうかの印を見て、機械的に外しています。

実績のページの写真は、「この会社はこういう現場を見ている」という証拠として読まれます。実在しないものを、その場所に置くわけにはいきません。

確認の取れない数字と固有名詞

AIは、もっともらしい数字を書きます。弊社では、出典か本人の確認が取れない数字・日付・社名は、資料にも記事にも書かないと決めています。迷ったものには印をつけておき、出す前に全部消し込みます。

お客様に出す資料の「提案」

実績のレポートは、AIと一緒に作ります。資料に載せるのは事実だけです。AIが「次はこうしましょう」と書いてきても、その部分は資料に入れず、代表の江口が先に読みます。必要だと判断したものだけを、あとから加えます。

事実はデータから確かめられます。提案はそうはいきません。お客様の事情を知っている人が選ぶべきものだと考えています。

最初からこの形だったわけではありません

発送の変換ツールだけでも、何度か作り直しています。

長い住所を、黙って切り捨てていた

クリックポストの住所欄には、文字数の上限があります。以前の版は、長い住所の41文字目以降を何も言わずに捨てる作りになっていました。マンション名が長い注文だと、宛先が欠けます。

いまは、切れてしまう住所を赤で表示します。切ったことが画面に出ない仕組みでは、誰も間違いに気づけません。

設定を、パソコンごとに持たせていた

商品名を送り状向けに置き換えるルールを、最初はそれぞれのパソコンのブラウザに保存していました。すると、人によってルールが食い違います。古い商品名のまま発送されかねません。

サーバー上の共通ファイル1つに寄せ、編集は管理者だけにしました。

警告を入れすぎた

念のためと思って入れた警告がありました。実際の注文データ6件で試すと、5件に出ました。全部が黄色だと、本当に見るべき赤が埋もれます。運用の実態を確かめてから、その警告は外しました。

回してみて分かったのは、押す人に仕事が集まることです

AIに渡して効いたのは、下ごしらえと道具づくりでした。判断は、その後ろに残ります。

そして最後のボタンを人に残すと、今度は押す人に仕事が集まります。弊社でも、押す人が一人に寄っていて、その人が止まると全部が止まる形になっています。押せる人を増やす必要がある、というのが今の課題です。

ルールは、ヒヤリとするたびに足してきました。最初から完成した線引きがあったわけではありません。

まとめ

AIに渡しているのは、下ごしらえと道具づくり。取り消しにくい操作は人が押す。写真と、確認の取れない数字と、お客様への提案は渡していません。

ご自身の会社で考えるときは、まず「一度やったら取り消しにくい操作」を書き出してみてください。そこを人に残すと決めれば、残りの仕事のどこをAIに渡せるかを、落ち着いて検討できます。


株式会社nullkyotoは、京都を拠点に、中小企業のAI導入と定着を支援しています。自社で試した手順をもとに、お手伝いします。初回相談は無料です。

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