システム投資のKPIの立て方

コンクリートの壁に落ちる窓の影

システムを入れたあとで「で、どれだけ良くなったの?」と聞かれて、答えられない。この場面に何度も立ち会ってきました。

原因は、導入前に現状を測っていないことです。KPIは導入後に立てるものではなく、判を押す前に決めておくものです。この記事では、測るべき4つの軸と、立て方の5ステップ、そしてやってはいけない立て方を書きます。

目次

なぜKPIを立てないまま導入してしまうのか

理由は、だいたいこの3つのどれかです。

  • 導入自体が目的になっている。稼働日がゴールになっていて、その先が設定されていません。
  • 「効率化」という言葉が測れない。何がどうなったら効率化なのかを決めていません。
  • ベンダーがKPIを提案してこない。彼らの仕事は納品までだからです。これはベンダーが悪いのではなく、役割が違います。

つまりKPIを立てるのは、発注する側の仕事です。

KPIは「導入前の数字」がないと立てられない

一番多い失敗は、導入後になってから効果を測ろうとすることです。

BeforeがなければAfterは評価できません。当たり前のことなのですが、これが抜けます。

だから、最初にやるべきは目標設定ではありません。現状の測定です。

これは地味ですし、プロジェクトが盛り上がっている時期にやるのは面倒に感じます。ですが、ここを飛ばすと後で必ず困ります。

測るべき4つの軸

業務システムの効果は、たいていこの4つのどれかに落ちます。

1. 時間

誰が、何に、何時間使っているか。

「時間がかかっている」ではなく、「月末処理にAさんが3日、Bさんが1日」と数えます。人件費に換算できるので、投資判断の根拠にもなります。

2. 精度

在庫差異率、入力ミスの件数、手戻りの回数。

精度は、改善しても売上に直結しないので軽視されがちです。ですが精度が低いと、その確認と修正に時間が奪われます。結局は1に返ってきます。

3. 速度

リードタイム。月次集計が何営業日で出るか。受注から出荷まで何時間か。

速度は判断の質に直結します。1週間前の在庫を見ながら仕入れを決めているのと、前日の数字を見ているのとでは、打てる手が違います。

4. 金額

滞留在庫金額、機会損失、残業代。

在庫はキャッシュそのものです。どの時期にどれくらいのキャッシュが必要になるかの予測が立つことは、資金繰りの問題に直結します。

KPIの立て方(5ステップ)

  1. 症状を数える。例:棚卸しに2日、差異の原因追跡に月平均8時間。
  2. うちシステムで減らせる部分を見積もる。全部は減りません。リアルな線を引きます。
  3. 目標値と期限を決める。例:導入6ヶ月で棚卸しを3時間に。
  4. 誰がいつ測るかを決める。ここが抜けるとKPIは必ず形骸化します。
  5. 測った結果をどこで共有するか決める。月次の会議体に組み込むのが一番続きます。

4と5が重要です。目標を決めるだけなら誰でもできますが、測り続ける仕組みがないと、半年で誰も見なくなります。

やってはいけないKPIの立て方

  • 分母のない目標。「業務効率30%改善」は、何の30%かがないと測れません。
  • ベンダーの提案書の数字をそのまま使う。他社の平均値は自社の目標にはなりません。
  • 測定コストが高すぎるKPI。測るために新しい作業が増えるなら、本末転倒です。
  • 完璧な数字を探して進まない。粗い数字でも、測り始めるほうがいいです。

「守り」のシステムはKPIが立てやすい

宣伝・マーケティング系の「攻め」のシステムは、実はKPIが立てにくいです。売上が上がったとして、それがツールのおかげなのか、商品が良かったのか、季節要因なのかを分離できないからです。

一方で業務効率化系の「守り」は、時間・精度・速度・金額で直接測れます。因果がはっきりしています。

これも、私が「守り」への投資をお勧めする理由の一つです。効果が測れるということは、次の投資判断の材料が手に入るということでもあります。

3ヶ月・6ヶ月・1年で見るものを分ける

  • 3ヶ月:使われているか。利用率、ログイン人数、手作業に戻っていないか。この時期に効果を問うのは早いです。
  • 6ヶ月:効果が出ているか。時間・精度・速度の数字がBeforeから動いたか。
  • 1年:投資回収の見通しが立つか。金額換算して、何年で回収できるか。

3ヶ月で効果を問い詰めて、まだ定着していないシステムを「失敗」と断じてしまうケースがあります。これはもったいないです。

まとめ

システムの良し悪しは、KPIを達成したかどうかで決まります。そしてKPIを立てるには、導入前に現状を測っておくことが先に必要になります。

もし測っていないなら、まずそこからです。システムを入れるのは、その後で構いません。


株式会社nullkyotoは、京都を拠点に販売管理・WMS・ECの導入と現場定着を支援しています。現状の棚卸しと測定設計だけのご依頼も承っています。初回相談は無料です。

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