「RFPを出してください」とベンダーに言われて、調べにきた方が多いと思います。
先に結論を書きます。RFPは発注側が書くものですが、立派なものを作る必要はありません。A4で数枚あれば十分に機能します。
むしろ、完璧なRFPを作ろうとして3か月止まっている会社を何度か見ています。それは本末転倒です。
RFPとは(提案依頼書)
RFPは Request For Proposal の略で、日本語では提案依頼書と呼びます。システムを入れたい会社が、ベンダーに「こういうことがしたいので、提案と見積をください」と伝えるための文書です。
似た略語が3つあります。使う順番で覚えるのが早いです。
- RFI(情報提供依頼)…どんな選択肢があるのか、市場を知るために出す
- RFP(提案依頼)…要件を示して、提案と見積を求める
- RFQ(見積依頼)…仕様が固まったあと、金額だけを求める
順番はRFI、RFP、RFQ。ただし中小企業の案件では、RFIを省いてRFPから始めることがほとんどです。候補がすでに2〜3社に絞れているなら、その方が早く進みます。
誰が書くのか
発注側が書きます。ベンダーに書いてもらうものではありません。
とはいえ、書ける会社のほうが少ないです。自社の業務を、社外の人に伝わる文章で説明した経験がある人は、そう多くありません。書けなくて普通です。
なぜ「しっかり作れ」と書いてある記事が多いのか
RFPについて検索すると、構成要素が10項目あって、作成手順が6ステップあって、という記事が並びます。
それらの多くは、RFPを受け取る側が書いています。ベンダー、SIer、ツールを売っている会社です。
受け取る側にとって、情報は多いほど楽です。詳しく書いてあるほど提案の精度が上がり、あとで揉めにくくなる。だから「しっかり作りましょう」と書く。悪意ではなく、立場からくる自然な結論です。
ただ、発注側の工数は無限ではありません。情シスが1人、あるいは総務が兼務、という会社で10項目のRFPを書き切るのは現実的ではない。書き切れずに止まるくらいなら、A4数枚で出したほうが前に進みます。
正直に書いておくと、弊社はRFP作成の支援もしています。「小さく書けばいい」と言うのは、自分の仕事を減らす方向の主張です。それでもこう書くのは、止まっている会社のほうが多いからです。
A4数枚に、この5つが入っていれば足ります
- いま困っていることを、数字で 例:月末集計に3日かかる、在庫差異が月平均120件
- 業務の規模 拠点数、利用人数、SKU数、月の伝票件数
- つなぐ相手 会計ソフト、ECモール、倉庫のWMS、POS
- やらないこと 今回は手をつけない領域を明記する
- 判断のスケジュールと予算のレンジ
4の「やらないこと」が、いちばん抜けます。これを書かないと、各社が良かれと思って範囲を広げ、金額が膨らみ、比較できなくなります。
5の予算レンジを伝えることに抵抗がある方が多いのですが、伝えたほうが良い提案が来ます。予算が分からないと、ベンダーは安全側に寄せて見積もるしかないからです。
この5つは相見積もりの取り方で書いたものと同じです。RFPと呼ぶかどうかは、正直どちらでも構いません。各社に同じ前提を渡す。それがRFPの本質です。
要件定義とは違います
よく混同されますが、別物です。
- RFP…何をしたいか
- 要件定義…どう作るか
要件定義は、発注先が決まったあとに、ベンダーと一緒に作ります。RFPの段階で作り方まで書いてしまうと、ベンダーの提案の幅を自分で狭めることになります。
やりたいことと、譲れない条件を書く。作り方はベンダーに考えてもらう。この分担が基本です。
書かないほうがいいこと
社内で決まっていないこと
「たぶん経理も使うと思います」は書かないでください。提案の範囲が広がり、金額が上がり、稼働後に誰も使わない機能が残ります。決まってから足すほうが安いです。
現場の要望を、そのまま全部
ヒアリングした要望をそのまま並べると、要件は必ず膨らみます。取捨選択できるのは、業務をやめる権限を持っている人だけです。経営が一度目を通してから出してください。
実現できるか分からない要求
「AIで自動化してほしい」のように、何がどうなれば達成なのか決まっていない要求は、各社が別々に解釈します。比較できなくなります。
そもそもRFPを作らなくていい場合
あまり書かれていないので、こちらも書いておきます。次のどれかに当てはまるなら、RFPは要りません。
- すでに1社に決めている…比較しないなら、比較のための文書は要りません。要望を箇条書きで渡せば十分です
- SaaSの標準機能だけで終わる…カスタマイズしないなら、比べるのは機能表と価格です。トライアルを触ったほうが早い
- 金額が小さい…目安として初期100万円を下回る案件で、A4数枚を作る工数は見合わないことがあります
- 業務のほうが固まっていない…これがいちばん多い。先に業務を決めてください。決まっていない業務をシステムに固定すると、稼働直後に作り直しになります
逆に、複数社を比べる、基幹システムを入れ替える、既存システムと連携するのどれかがあるなら、A4数枚は作ったほうがいいです。作らずに進めると、あとで「言った・聞いていない」が必ず出ます。
出したあとに決めておくこと
何社に出すか
3社が扱いやすい数です。2社だと比較になりにくく、5社を超えると評価の工数が現実的でなくなります。1社だけ本命がいる場合でも、比較対象は用意したほうがいいです。
評価軸を、提案を見る前に決める
これが効きます。提案を見てから評価軸を決めると、印象が良かった会社に合う軸ができあがります。受け取る前に、何を何点で見るかを決めて、紙にしておいてください。
スケジュール
提案までに2〜3週間は見てください。1週間で出させると、使い回しの提案書が来ます。RFPの作成そのものは、ヒアリングから仕上げまでおおむね1〜2か月です。
まとめ
RFPは、立派に作ることが目的ではありません。各社に同じ前提を渡して、差が見える状態を作るための道具です。
A4数枚。半日かけて作っておけば、そのあとの判断がすべて楽になります。完璧なものを目指して止まるくらいなら、粗くても出したほうが前に進みます。
株式会社nullkyotoは、発注する側の立場でRFPの作成とベンダー選定を支援しています。弊社は選定対象のベンダーから手数料を受け取らず、システム開発そのものも受託していません。


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