実店舗とECで在庫がズレる|連携でつまずく3つのポイント

分岐する線路

ECで売れた商品が、実は店舗で売れていた。在庫があると思って受注したのに、出せない。

この相談を受けるとき、多くの方から「在庫連携ツールを入れれば直るのか」と尋ねられます。

結論から言うと、ツールだけでは直りません。在庫がズレる原因の大半は、連携の仕組みではなく、在庫の「持ち方」を決めていないことにあります。

つまずく場所は、だいたい次の3つのどれかです。

目次

ポイント① 在庫を「共有するか、分けるか」を決めていない

同じ商品を店舗とECの両方で売るとき、在庫の持ち方には3つの選び方があります。

  • 完全共有…全在庫をひとつの数字として扱い、店舗でもECでも同じプールから引く
  • 按分(引当)…EC向けに一定数を確保し、残りを店舗に回す
  • 別建て…EC専用の在庫を物理的に分けて持つ

どれが正解かは、商品の回転率と店舗数で変わります。問題は、この3つを決めないままツールを入れてしまうことです。

ツールは「決められたルールを実行するもの」であって、「ルールを決めてくれるもの」ではありません。決めていないと、初期設定のときにベンダーが提案した値がそのまま本番になります。

決めるときの目安

  • 回転が速い定番商品 → 完全共有にしやすい(機会損失を減らせる)
  • 一点物・少ロット → 別建てが安全(売り越しが致命的)
  • セール・催事の期間 → 按分を一時的に切り替える前提で設計する

ここを商品カテゴリ単位で表にしておくだけで、導入後の事故は大幅に減ります。

ポイント② 反映の「間隔」を確認していない

「リアルタイム連携」と謳っていても、実際には数分から30分おきのバッチ処理であることがあります。

普段は問題になりません。事故が起きるのは、売れ方が速い瞬間です。

  • タイムセールの開始直後
  • SNSやメディアで取り上げられたとき
  • 再入荷の通知を出した直後

残り1点の商品に3分間で5件の注文が入れば、4件は売り越しになります。連携間隔が15分だと、そのあいだは在庫数が更新されません。

発注前に、この3つを確認してください。

  1. 在庫数が何分おきに反映されるか(モールごとに違うことがあります)
  2. 在庫がゼロになったとき、自動で売り切れ表示になるか
  3. 安全在庫(しきい値)を設定できるか

3の安全在庫は、回転の速い商品では最も安い保険です。残り3点でECを売り切れにする設定にするだけで、売り越しの大半は消えます。機会損失との天秤になりますが、謝罪と返金の対応コストを含めて考えれば、多くの場合、売り越しを許容するほうが高くつきます。

ポイント③ イレギュラー処理のルールがない

連携ツールが得意なのは、「普通に売れて、普通に出荷する」流れです。在庫がズレるのは、そこから外れたときです。

  • 店舗での取り置き…レジを通さないので、在庫上は「ある」まま
  • 返品・交換…戻った商品をいつ在庫に戻すか。検品前に戻すと、不良品を売ってしまう
  • 店舗間移動…発送した瞬間と到着した瞬間のあいだ、在庫はどこにあるのか
  • セット商品・福袋…単品の在庫と連動しているか
  • 予約販売・受注生産…手元にない在庫をどう数えるか

紙製品メーカー様の支援では、EC在庫の差異を追った結果、出荷実績の22.5%が売上に計上されていないという構造的な問題に行き当たりました。在庫が合わないという相談が、実は計上の仕組みの問題だった例です。

イレギュラーは、現場の人に聞かないと出てこないことが多いです。ツール選定の前に、店長とEC担当に「例外のとき、どうしていますか」と聞く。これだけで10分でリスクの大半が見えます。

ツール選びの前に、決めておく4つ

  1. 商品カテゴリごとの在庫の持ち方(共有・按分・別建て)
  2. 安全在庫の値(回転率で変える)
  3. イレギュラーの処理ルール(取り置き・返品・店舗間移動・セット)
  4. ズレが出たときに誰が気づくか(差異のアラートを誰が見るか)

この4つをA4一枚にしてからツールを見に行くと、デモで聞くことが変わります。「何ができますか」ではなく、「この運用はできますか」と聞けるようになるからです。

実際、あるセレクトショップ様のEC支援では、「ステータス管理ができる」「複数モールに対応している」「委託先倉庫と標準連携できる」の3つを先に要件として文章にしてからツールを比べました。機能一覧の○×を追うより、この順番のほうが早いです。

まとめ

在庫がズレるのは、ツールが悪いからではありません。決めていないことが、ツールの初期値のまま本番に出ているだけです。

持ち方、反映間隔、イレギュラー。この3つを先に決める。逆に言えば、ここを決められていれば、ツールはそれほど高価なものでなくても回ります。


株式会社nullkyotoは、京都を拠点にECと実店舗の在庫連携・受注運用の設計を支援しています。現状の運用を見て、どこでズレているかを切り分けるところまでのご依頼も承っています。初回相談は無料です。

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