ECをエクセルで回している。これ自体は、意外に長くもちます。
受注CSVを落として、関数で住所を整えて、送り状を出す。月100件、SKUが数百、モールが1つなら、このやり方のほうが早いです。
問題は、ECはある日突然、エクセルの外へ出ていくことです。しかも、売上が伸びているまさにその日が来ます。
EC特有の分岐点を、5つ整理します。
分岐点① モールを2つ目に増やしたとき
これが最大の分岐点です。
モールが2つになった瞬間、作業は2倍では済みません。
- 受注CSVの列順と項目名がモールごとに違う
- 商品コードの付け方が違う
- 在庫数の反映を、人が両方に入力する
- 在庫をどう振り分けるかを、毎日判断する
特に最後の2つ。人が在庫数を両方に入力している状態は、売り越しが起きるのを待っているようなものです。
モールを増やす計画があるなら、増やす前に検討してください。増やしてからだと、現場が回らない中での導入になります。
分岐点② 受注が日次で回らなくなったとき
件数の目安を聞かれますが、件数では決まりません。判断はこちらです。
その日の受注を、その日のうちに処理しきれているか。
翻訳すると、未処理の受注が翌日に持ち越されていないか。持ち越しが常態化しているなら、すでに容量を超えています。
セールやメディア掲載で一気に注文が入ったとき、対応しきれずに発送が遅れる。このダメージはレビューに直接出ます。
分岐点③ 同梱・セット・ノベルティが増えたとき
単品を売っているうちは良いのですが、ECはどこかで必ずこうなります。
- 3点セット、福袋、ギフトボックス
- 購入特典の同梱(サンプル、ノベルティ)
- 定期便、予約販売、受注生産
これらはすべて、「売ったもの」と「減る在庫」が一致しない取引です。エクセルでやるなら、人が頭の中で分解して、手で引くことになります。
ここを人に任せている限り、在庫差異は毎月必ず出ます。そして原因は追えません。
分岐点④ SKUが1,000を超えたとき
行数の問題ではありません。エクセルは100万行扱えます。
限界は、一覧を見て違和感に気づけなくなったときに来ます。
SKUが300なら、担当者は「この商品の在庫がこの数字はおかしい」と分かります。3,000になると、誰も気づきません。人間の目という最後のチェック機能が外れる。ここが分岐点です。
ある文具メーカー様の支援では、人気シリーズの発売段取りが担当者の頭の中にしかなく、28セット分の手順が共有されていませんでした。発売日から逆算して、日付を入れるだけで段取りが決まる表にしました。システムの前に、まず表に出すという順番もあります。
分岐点⑤ 担当が2人以上になったとき
エクセルは同時編集に向きません。誰かが開いているあいだ、他の人は編集できない。だからコピーが増えます。
さらにECでは、発送したかどうかをリアルタイムで共有できないことが致命的です。二重発送、未発送の見落とし、問い合わせへの回答遅れ。
1人で回しているうちは、この問題は起きません。逆に言えば、2人目を入れるタイミングが、仕組みを見直すタイミングです。
卒業するときの順番
いきなり全部をシステムに乗せないこと。順番はこうです。
- 受注の一元化…複数モールの受注をひとつの画面で見る。ここが一番効きます
- 在庫の自動反映…人の入力をなくす
- 発送・送り状の連携…倉庫や配送会社とつなぐ
- 分析…上の3つが回ってからで十分
あるセレクトショップ様のEC支援では、物流を外部委託に切り替えるのに合わせて、受注のステータス管理・複数モール対応・委託先WMSとの連携の3つを要件にしてツールを選びました。先に要件を文章にすると、選定は早くなります。
まだ卒業しなくていい場合
次のすべてに当てはまるなら、急ぐ必要はありません。
- モールは1つ(または自社ECのみ)
- 担当は1人
- セットや同梱がない、またはごく少ない
- その日の受注をその日に処理できている
この状態でシステムを入れると、月額費用だけが増えて、作業は楽になりません。入れ替えありきでは判断しないことです。
まとめ
ECのエクセル卒業は、売上規模ではなく複雑さで判断します。
モールが2つになった。受注が翌日に持ち越される。セットが増えた。SKUを見渡せなくなった。2人目が入った。
このうち2つ以上が重なったら、検討を始める時期です。重なってからではなく、重なることが分かった時点で動けると、すべてが楽になります。
株式会社nullkyotoは、京都を拠点にECの受注・在庫運用の設計とツール選定を支援しています。「いま切り替えるべきか」の判断だけのご依頼も承っています。初回相談は無料です。


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